
ペットを迎え入れる前に考えるべきこと|ペットシッターが伝えたい動物福祉
「ペットを迎えたばかりですが、数日家を空けるのでシッターに来てもらえますか」このようなご相談をいただくことがあります。もちろん、急な事情が起きることはあります。仕事、通院、家族の事情など、予定通りにいかない日もあります。
ただ、ペットを迎えた直後は、その子にとって新しい環境へ適応している大切な時期です。知らない場所、知らない匂い、知らない音、知らない人。犬、猫、小動物のどの種であっても、環境の変化は負担になり得ます。ペットシッターを検討する前に、まず考えたいことがあります。その子が安心して暮らせる日常の土台は、すでに整っているでしょうか。
迎える前に考えたいこと
ペットを迎える前には、「飼いたい」という気持ちだけでなく、生活全体を見直す必要があります。環境省の家庭動物等の飼養及び保管に関する基準では、飼養に先立って動物の本能、習性、生理に関する知識の習得に努め、住宅環境や家族構成の変化も含めて、将来にわたって飼えるかを慎重に判断することが示されています[1]。迎える前に確認したいのは、次のような点です。
- その動物の本来の行動や生活リズムを理解している
- 食事、水、排泄、休息、運動、遊び、社会的関わりを毎日整えられる
- 仕事、旅行、趣味、通院、家族行事と両立できる
- 急な外出や災害時の対応を考えている
- 医療費、予防、環境整備に必要な費用を継続できる
- 迎えた直後に長時間の留守番を前提にしていない
ペットを迎えることは、生活に癒しを加えることだけではありません。ひとつの命の暮らしを、長期にわたって引き受けることです。
動物福祉は食事と掃除だけではない
動物福祉を考えるとき、食事や水、清潔なトイレは大切です。ただし、それだけで十分とはいえません。RSPCA Australiaが整理している動物福祉の「5つの自由」では、飢えや渇きからの自由だけでなく、不快、痛み、恐怖、苦痛からの自由、そして正常な行動を表現する自由が含まれます[2]。
つまり、動物福祉は「生きていられる状態」だけを指すものではありません。その動物が安心して休めること。怖いときに隠れられること。体を動かせること。食べ方、探索、遊び、社会的関わりなど、その動物らしい行動ができること。そこまで含めて、日常の環境を考える必要があります。
犬・猫・小動物では必要な環境が違う
「ペット」と一括りにしても、犬、猫、小動物では行動様式が大きく異なります。留守番への耐性も、種、年齢、健康状態、性格、過去の経験、環境によって変わります。
犬は人との関わりと段階的な練習が重要
犬は、人との関わりや生活リズムの影響を受けやすい動物です。RSPCA UKは、犬をひとりで過ごせるようにする練習について、最初から長く離れるのではなく、短い時間から段階的に慣らすよう助言しています[3]。同じ資料では、犬をひとりにできる時間は個体によって異なるとしながら、運動、排泄、人との関わりの機会を確保する必要性にも触れています[3]。
迎えたばかりの犬や子犬では、環境に慣れる時間、安心できる関係づくり、排泄や休息のリズムづくりが必要です。犬の場合、長時間の留守番が日常的になる生活環境で本当に迎えてよいのかは、事前に慎重に考える必要があります。関連記事では、子犬の留守番時間について詳しくまとめています。
仕事、通院、買い物などで外出するとき、子犬を何時間まで留守番させてよいのか迷う方は少なくありません。 「5時間なら大丈夫」「途中でシッターが来れば安心」と単純には決められません。 大切なのは、合計不在時間だけでなく、子犬が連続して無人になる時間を見ることです。 ma familleでは、月...
猫は安心できる場所と環境配置が大切
猫は「ひとりでも平気」と思われやすい動物です。しかし、猫にも安心できる場所、資源の配置、遊び、予測しやすい人との関わりが必要です。AAFP/ISFMの猫の環境ニーズガイドラインでは、安全な場所、分離された食事・水・トイレなどの資源、遊びや捕食行動の機会、肯定的で一貫した人との関わりなどが重要な柱として整理されています[4]。
Cats Protectionも、新しく迎えた猫は環境の変化でストレスを受けやすく、静かな部屋、隠れ場所、食事、水、トイレ、爪とぎなどを整え、猫のペースで慣れることが大切だと説明しています[5]。猫だから短時間の世話だけで十分、とは考えません。猫が安心して隠れ、休み、食べ、排泄し、探索できる環境が整っているかを確認します。
うさぎやモルモットは隠れ場所と仲間、毎日の観察が欠かせない
うさぎやモルモットは、捕食される側の動物です。そのため、安心して隠れられる場所、十分な運動、食べ続けられる適切な食事、静かな環境が重要です。RSPCA UKは、うさぎについて、安全な隠れ場所、運動、かじる・掘る・探索する機会、仲間との関わりを重要な行動ニーズとして説明しています[6]。また、うさぎは毎日食べ、十分な糞をしているかを確認し、食欲や排泄に変化があれば獣医師に相談するよう助言しています[7]。
モルモットについても、RSPCA UKは社会的な動物であり、仲間との関わり、隠れ場所、運動、トンネル、かじるものなどが必要だと説明しています[8]。小動物は体が小さいため、異変が見えにくいことがあります。食べているか、排泄しているか、動き方に変化がないか。毎日の観察がとても重要です。
ハムスターやラットは生活リズムと探索環境を考える
ハムスターは夜行性の傾向があり、昼間に眠れる静かな環境が必要です。RSPCA UKは、ハムスターには昼間に邪魔されず眠れること、規則的な明暗、夜間に遊び運動できる十分な空間、巣作りや穴掘りができる床材が必要だと説明しています[9]。一方、ラットは非常に社会的で知的な動物です。
RSPCA Australiaは、ラットは少なくとも1匹以上の同種の仲間と暮らす必要があり、精神的な刺激や環境エンリッチメントが重要だと説明しています[10]。同じ「小動物」でも、単独飼育が基本となる種と、仲間が必要な種があります。夜行性か、昼行性か。単独性か、社会性が強いか。探索、かじる、掘る、登る、隠れるといった行動をどう満たすか。
迎える前に、その種の生活に合わせて環境を用意する必要があります。
シッターは日常の土台を支える存在
当店のペットシッターは、生きるための給餌やトイレ掃除を、作業として肩代わりするものではありません。私たちが大切にしているのは、その子が安心して暮らせる日常の土台があるか、ということです。シッターでは、食事の量や食べ方に異変はないか、水は適切に飲めているか、排泄に異常はないか、といった目線で観察します。
また、清潔な環境だけでなく、安心できる場所、適切な刺激、休息、社会的な関わり、その動物らしい行動ができる環境が整っているかを、専門的な視点で見ています。つまり、ペットシッターは飼い主さまの日常的な責任を置き換える存在ではありません。その子の普段の暮らしをできるだけ崩さず、安心して過ごせるよう支える存在だと考えています。
長時間の留守番を前提に迎えない
犬や猫、小動物を迎えた直後に、長時間の留守番や数日間の不在を予定している場合は、迎える時期そのものを見直すことも大切です。これは、飼い主さまを責めるためではありません。新しい環境に慣れる時期は、その子にとって大きな変化です。迎えた直後に十分な観察や関わりができない場合、食欲、排泄、睡眠、行動の変化に気づきにくくなります。
人間の赤ちゃんであれば、朝から晩までひとりにして、誰かが短時間だけ様子を見に来れば十分だとは考えないはずです。もちろん、人間と動物は同じではありません。必要なケアの内容も異なります。それでも、未発達な命や新しい環境に慣れていない命を迎えた直後に、長時間ひとりにすることを、動物だから当然のように考えてよいのか。
そこは、迎える前に一度立ち止まって考える必要があります。
迎える前のセルフチェック
ペットを迎える前に、次の項目を確認してください。
| 確認項目 | 見直したいポイント |
|---|---|
| 時間 | 毎日その子の観察、世話、関わりに使える時間がある |
| 留守番 | 迎えた直後から長時間の留守番を前提にしていない |
| 環境 | その種に合った安全な場所、休息場所、運動や探索の機会がある |
| 行動 | 隠れる、遊ぶ、かじる、掘る、登るなど、その動物らしい行動を満たせる |
| 社会性 | その種に必要な人や同種との関わりを理解している |
| 健康 | 食欲、排泄、活動量、体調変化を毎日観察できる |
| 費用 | 食事、用品、医療、予防、環境改善の費用を継続できる |
| 緊急時 | 急な外出、入院、災害時の預け先や対応を考えている |
ひとつでも不安がある場合は、迎えることを急がなくてよいと思います。先に環境を整える。仕事や外出の予定を見直す。家族で役割を決める。信頼できる相談先を探す。迎える前に準備することは、その子の安心につながります。
当店で対応を慎重に判断するケース
ma familleでは、動物福祉を優先するため、次のようなケースでは通常のシッター依頼として対応できるかを慎重に判断します。
- 迎え入れ直後で、まだ生活環境に慣れていない
- 子犬、子猫、幼い小動物で、発達や体調の観察が特に必要
- 長時間の留守番や数日間の不在を、短時間訪問だけで補おうとしている
- 食欲、排泄、睡眠、行動に不安定さがある
- 室温、誤飲、逃走、転落などの安全対策が十分ではない
- シッター訪問前後の無人時間に強い不安や危険が予想される
対応できない可能性がある場合も、単にお断りすることが目的ではありません。その子にとって無理の少ない方法を考えるために、留守番時間の短縮、家族や知人との分担、在宅対応、適切な預かり、受診や専門家への相談などを提案することがあります。
FAQ
Q. 迎えたばかりでも、シッターを頼めば外出できますか?
A. 状況によります。短時間の外出でも、年齢、健康状態、環境への慣れ、食欲、排泄、休息、安全対策を確認します。迎えた直後に長時間の留守番や数日間の不在を予定している場合は、迎える時期や留守番計画そのものを見直すことをおすすめします。
Q. 猫や小動物なら、食事と水を多めに置けば大丈夫ですか?
A. 食事と水だけでは判断できません。猫には安心できる場所や適切な資源配置が必要です。うさぎ、モルモット、ハムスター、ラットなども、それぞれ必要な環境や行動様式が異なります。食欲や排泄の変化が重要なサインになる動物もいるため、毎日の観察が必要です。
Q. 仕事で家を空ける時間が長い場合、ペットは迎えない方がよいですか?
A. 一律にはいえません。ただし、迎えた直後から長時間の留守番が日常になる場合は慎重に考える必要があります。家族で分担する、在宅日を増やす、通園や預かりを検討する、迎える時期をずらすなど、その子に無理の少ない生活設計を先に考えてください。
まとめ
ペットを迎える前に考えたいのは、「世話ができるか」だけではありません。その子が安心して暮らせる日常の土台を用意できるか。仕事、趣味、旅行、通院、家族の予定を含めて、生活全体の中で無理なく支えられるか。動物福祉は、食事や水、掃除だけで成り立つものではありません。安心、休息、適切な刺激、社会的な関わり、その動物らしい行動ができる環境まで含めて考える必要があります。
ma familleのペットシッターは、飼い主さまの責任を置き換えるものではなく、その子の日常を支えるためのサービスです。迎えた後に困ってから考えるのではなく、迎える前に考える。それが、その子の安心と動物福祉を守る第一歩だと考えています。
参考文献
- 環境省. “動物の適正な取扱いに関する基準等.” 行政資料. 動物の適正な取扱いに関する基準等. 参照日: 2026-07-29.
- RSPCA Australia. “What are the Five Freedoms of animal welfare?” 動物福祉団体の解説資料. What are the Five Freedoms of animal welfare?. 参照日: 2026-07-29.
- RSPCA UK. “Training your dog to be left alone.” 専門団体の飼い主向け助言. Training your dog to be left alone. 参照日: 2026-07-29.
- Ellis SLH, Rodan I, Carney HC, et al. “AAFP and ISFM Feline Environmental Needs Guidelines.” Journal of Feline Medicine and Surgery. 2013;15(3):219-230. doi:10.1177/1098612X13477537. AAFP and ISFM Feline Environmental Needs Guidelines. 参照日: 2026-07-29.
- Cats Protection. “Bringing a Cat Home.” 動物福祉団体の飼い主向け助言. Bringing a Cat Home. 参照日: 2026-07-29.
- RSPCA UK. “Natural Behaviours of Pet Rabbits.” 専門団体の飼い主向け助言. Natural Behaviours of Pet Rabbits. 参照日: 2026-07-29.
- RSPCA UK. “How To Keep a Rabbit Healthy & Happy.” 専門団体の飼い主向け助言. How To Keep a Rabbit Healthy & Happy. 参照日: 2026-07-29.
- RSPCA UK. “Know Your Guinea Pig Is Happy.” 専門団体の飼い主向け助言. Know Your Guinea Pig Is Happy. 参照日: 2026-07-29.
- RSPCA UK. “Understanding hamster behaviour.” 専門団体の飼い主向け助言. Understanding hamster behaviour. 参照日: 2026-07-29.
- RSPCA Australia. “How should I care for my rats?” 動物福祉団体の飼い主向け助言. How should I care for my rats?. 参照日: 2026-07-29.

