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犬が散歩中に他の犬へ吠える時はどうする?犬同士の挨拶は必要なのか

散歩中、前から犬が来る。愛犬が吠える。相手の犬も吠える。それでも「挨拶させれば慣れるかも」「犬同士だから近づけば分かり合えるかも」と近づけてしまう。

現場では、このような場面をよく見かけます。吠えている犬同士を近づけた結果、リードが絡む、犬が飛びかかる、喧嘩になりかける、どちらかの犬が強く怖がることもあります。

また、犬が怖がったり怒ったりしているのに、飼い主が体の向きを変え、相手にお尻を嗅がせて挨拶させようとする場面もあります。犬同士の挨拶として「お尻を嗅ぐ」ことだけが広まり、犬の同意や距離、逃げ道が置き去りになっているケースです。

結論からいうと、散歩中に他の犬へ吠えている犬を、近づけて慣らそうとする必要はありません。多くの場合、吠えには警戒、不安、距離を取りたい気持ち、興奮、過去の学習が関係します。仮に喜んでいるように見える場合でも、吠えている時点で興奮が高く、落ち着いた挨拶ができる状態とは限りません。

犬同士の挨拶は、すべての犬に必要な義務ではありません。まず必要なのは、犬が吠えなくても済む距離を作ることです。

散歩中に吠えたら、まず近づけない

散歩中に他の犬へ吠えたら、最初に行うのは「近づけること」ではなく「距離を取ること」です。

吠えながら近づくと、犬は興奮したまま相手に接近します。相手の犬も緊張していれば、双方の逃げ道が少ない状態になります。リードが張ると、体の動きも制限されます。

この状態で挨拶を成立させるのは難しく、犬にとっては「他の犬を見ると緊張する」「吠えると近づくことになる」「相手が怖い」という経験になりやすくなります。

RSPCA UKは、犬の吠えには興奮、欲求不満、退屈、怖さ、何かを求めること、苦痛など複数の理由があると説明しています[1]。吠えはコミュニケーションですが、コミュニケーションだからといって、相手に近づけてよい合図ではありません。

まずは、愛犬が相手を見ても吠えずにいられる距離まで離れます。相手の犬を見つけたら、道を変える、車や植え込みを視覚的な遮りにする、Uターンする、広い場所で弧を描いて離れるなど、接近を避ける選択肢を持ちます。

吠えている犬は「挨拶したい」とは限らない

犬が他の犬を見て吠えると、「行きたいのかな」「遊びたいのかな」と見えることがあります。

たしかに、興奮や遊びたい気持ちで吠える犬もいます。しかし、多くの相談では、警戒や不安、距離を取りたい気持ちが関係しています。相手に近づきたいというより、「これ以上近づかないで」「どうしたらよいか分からない」という状態です。

RSPCA UKのボディランゲージ資料では、犬が不安なときに、頭を下げる、目をそらす、耳を引く、尻尾を下げる、あくび、唇をなめるなどのサインが見られると説明されています[2]。また、怒っている、非常に不快な状態では、体が硬くなる、毛が逆立つ、尾が硬くなる、歯を見せる、うなるなどのサインが出ることがあります[2]

吠えだけで「喜んでいる」と判断せず、次のようなサインを合わせて見ます。

見るポイント近づけない方がよいサイン
体の向き前のめり、後ろへ引く、横へ逃げようとする
体の硬さ体が固まる、動きがぎこちない
口元口を閉じる、唇をなめる、歯を見せる
目線凝視する、目をそらす、白目が見える
高く硬い、低く巻き込む、振り方が硬い
回復離れてもすぐ落ち着かない

犬が吠えている時点で、落ち着いた判断が難しい状態です。喜びに見える吠えでも、興奮が高ければ、相手との距離を詰める前に落ち着く時間が必要です。

「犬同士は交流させるべき」という誤解

犬は社会的な動物です。しかし、それは「道端や公園ですれ違う犬すべてと交流すべき」という意味ではありません。

PDSAは、すべての犬が非常に社交的なわけではなく、限られた犬だけを好む犬や、人との関わりを好む犬もいると説明しています[3]。怖がりで反応しやすい犬では、新しい犬を避け、距離を保つことも問題ではないとしています[3]

犬にとって自然なのは、犬であれば誰とでも遊ぶことではありません。相手との相性、過去の経験、年齢、体調、場所、リードの有無、逃げ道、飼い主の緊張などで反応は変わります。

「犬同士だから挨拶させたい」「友達を作ってあげたい」という気持ちは、飼い主として自然です。しかし、それが犬の希望とは限りません。飼い主の安心や理想のために、犬が怖がる接触を経験しているなら、それは犬のための交流ではなく、飼い主側の都合になってしまいます。

犬が他の犬と交流するかどうかは、飼い主の理想ではなく、犬の状態を見て決めます。

お尻を嗅がせる挨拶を強制しない

犬同士がお尻のにおいを嗅ぐことは、犬の情報収集の一つです。しかし、それを人が強制してよいわけではありません。

RSPCA Australiaは、子犬の社会化では、犬に調べるか離れるかの選択を与え、無理に何かをさせないことが重要だと説明しています[4]。これは子犬だけでなく、犬同士の接触を考えるときにも大切な考え方です。

犬が怖がっている、体を硬くしている、逃げようとしている、相手を凝視している、うなっている。この状態で飼い主が体を押さえたり、向きを変えたりしてお尻を嗅がせると、犬は逃げられません。

逃げられない状態で接近されると、犬はより強いサインを出す必要があります。うなる、歯を見せる、飛びかかる、咬むといった行動につながる場合があります。

「お尻を嗅ぐのが犬の挨拶」という知識だけでは不十分です。必要なのは、犬が近づきたいか、相手も受け入れているか、いつでも離れられるかを見ることです。

落ち着いたら近づける、というルールを作る

ma familleでは、犬同士の接近は「吠えているから近づける」ではなく、「落ち着いていられるなら検討する」と考えます。

近づけるかどうかの最低条件は、次のような状態です。

  • リードが緩んでいる
  • 食べ物を受け取れる
  • 飼い主の声や動きに気づける
  • 相手を見ても体が固まりすぎない
  • 相手から目をそらせる
  • 自分で距離を取れる
  • 相手の犬も落ち着いている
  • 双方の飼い主が止められる距離と環境にいる

これらが整っていない場合は、挨拶させる段階ではありません。

PDSAは、他の犬が怖い犬への対応として、犬が反応せず落ち着いていられる距離を保ち、そこから少しずつ良い経験を積むことを説明しています[3]。恐怖や不安を扱う行動修正では、犬が反応しない低い強さから進めることが重要です。

吠えている犬を近づけることは、練習ではなく、強すぎる刺激にさらすことになりやすいです。

家庭でできる対応

散歩中の吠えは、道端でその場だけ何とかしようとすると難しくなります。まずは、犬が吠えにくい条件を作ることから始めます。

相手の犬に先に気づく

飼い主が相手の犬に先に気づくと、距離を取る選択肢が増えます。

前から犬が来る、角から犬が出てきそう、公園入口に犬がいる。この時点で、道を変える、広い場所へ移動する、立ち止まらず離れるなどを選びます。

吠え始めてから止めるより、吠える前に距離を作る方が犬への負担は少なくなります。

そのためには、飼い主が周囲を見て歩くことが前提です。歩きスマホをしていると、前方の犬、曲がり角、自転車、子ども、伸びたリードに気づくのが遅れます。犬が吠え始めてから慌てて止めるのではなく、吠える前に進路を変えられる状態で歩きます。

伸縮リードの使い方にも注意が必要です。犬を先に交差点や曲がり角へ入らせると、相手の犬と出会いがしらに近距離で向き合うことがあります。これは犬同士の喧嘩だけでなく、車、自転車、歩行者との事故リスクにもつながります。

見通しの悪い場所、交差点、公園の出入口、人や犬が多い道では、リードを短めに持ち、犬が飼い主より先に飛び出さないようにします。散歩中の安全管理は、犬を強く制御することではなく、犬が吠えなくても済む距離と時間を飼い主が先に作ることです。

吠えない距離を探す

犬には、それぞれ「相手を見てもまだ落ち着ける距離」があります。

その距離では、犬は相手を見ても食べられる、飼い主に気づける、匂いを嗅げる、体を動かせる状態です。この距離を見つけることが、練習の出発点です。

近すぎる距離で練習すると、吠える経験だけが増えます。まずは遠くから見て、落ち着いていられる行動を強化します。

吠えていない行動を強化する

他の犬を見ても、吠えていない瞬間があります。

その瞬間に、飼い主を見る、匂いを嗅ぐ、道の端へ寄る、相手から目を離す、ゆっくり歩くなどの行動を強化します。

これは、吠えを叱って止めるのではなく、同じ場面でできる別の行動を増やす対応です。

他犬への吠えを含め、犬の行動をABAや行動科学でどう整理するかは、親記事でも解説しています。

すれ違いを成功体験にする

成功は「挨拶できたこと」ではありません。

吠えずに距離を取れた。相手を見ても戻れた。Uターンできた。吠えてもすぐ回復できた。これらも成功です。

すれ違いのたびに挨拶を目標にすると、犬は毎回強い刺激に向き合うことになります。散歩では、「平和にすれ違えた」「距離を取って終われた」という経験を積む方が大切です。

してはいけない対応

散歩中に他の犬へ吠える犬では、次の対応は避けます。

  • 吠えているのに相手へ近づける
  • 「挨拶すれば大丈夫」と犬同士を正面から合わせる
  • 犬の体を押さえてお尻を嗅がせる
  • 歩きスマホで周囲の犬や人に気づかない
  • 伸縮リードで犬を先に交差点や曲がり角へ入らせる
  • リードを短く強く張って相手の前に立たせる
  • 叱る、リードを強く引く、首輪でショックをかける
  • 怖がっている犬を「慣れるまで」その場に置く
  • 相手の犬や飼い主に断られても近づく

AVSABは、犬のトレーニングや行動修正では報酬ベースの方法を推奨し、痛み、恐怖、威圧を使う方法を支持しない立場を示しています[5]。IAABCも、行動介入では環境、安全、健康、学習歴を考慮し、動物に選択とコントロールを与えることを重視しています[6]

犬が怖がっているときに逃げ道をなくすことは、学習の助けにはなりません。犬が「近づかなくても大丈夫だった」と経験できる環境を作ることが先です。

ma famille の考え

ma familleでは、散歩中に他の犬へ吠える犬を、無理に犬同士で挨拶させる必要はないと考えます。

犬が社会的動物であることと、知らない犬と毎回交流すべきことは別です。道端ですれ違う犬は、家族でも仲間でもありません。相手の犬の性格、健康状態、過去の経験も分かりません。

犬同士の交流は、双方が落ち着いていて、逃げ道があり、飼い主が止められ、短く終われる条件で初めて検討します。

当店では、次のように判断します。

  • 吠えている犬同士は近づけない
  • 怖がる、固まる、逃げる、うなる犬には挨拶を強制しない
  • お尻を嗅がせるために犬の体を押さえない
  • 犬が落ち着ける距離を優先する
  • すれ違いでは、挨拶より安全な通過を優先する
  • シッター中は、他の犬との接触を原則として避ける

ペットシッター中の散歩では、飼い主の犬だけでなく、相手の犬と周囲の安全も考える必要があります。そのため、知らない犬との挨拶や接触は、基本的に行いません。

根拠と限界

RSPCA UKは、犬の吠えには興奮、怖さ、欲求不満、退屈、苦痛など複数の理由があると説明しています[1]。また、犬のボディランゲージとして、不安、不快、怒りのサインを示し、犬が不快なときは距離を取る必要があると説明しています[2]

PDSAは、すべての犬が非常に社交的なわけではなく、限られた犬だけを好む犬や、人との関わりを好む犬もいると説明しています[3]。怖がりで反応しやすい犬では、他の犬との距離を保ち、落ち着いていられる距離から良い経験を積むことを助言しています[3]

RSPCA Australiaは、子犬の社会化では、さまざまな経験を安全で肯定的に行い、犬に調べるか離れるかの選択を与え、無理に何かをさせないことを重視しています[4]。Dogs Trustも、子犬を他の動物に慣らす際は安全な距離から行い、落ち着いた行動を強化することを説明しています[7]

AVSABは、犬のトレーニングや行動修正では報酬ベースの方法を推奨しています[5]。IAABCは、介入時に動物の福祉、環境、安全、健康、学習歴、選択とコントロールを考慮することを示しています[6]

一方で、これらの資料は「すべての犬同士の挨拶を禁止すべき」と示しているわけではありません。犬によっては、相性のよい相手と落ち着いて挨拶できる場合もあります。この記事で重く見るのは、吠えている、怖がっている、興奮している、逃げ道がない状態で、近づけたり挨拶を強制したりするリスクです。

FAQ

Q. 他の犬に吠えるのは、遊びたいからですか?

A. 遊びたい場合もありますが、不安、警戒、距離を取りたい気持ち、興奮、過去の学習が関係していることも多いです。吠えている時点で落ち着いた挨拶ができる状態とは限らないため、まず距離を取ります。

Q. 吠える犬は、近づけて慣らした方がよいですか?

A. 近づければ慣れるとは限りません。怖がっている犬では、相手犬への不安が強くなることがあります。吠えない距離まで離れ、落ち着いて見られる経験を積む方が安全です。

Q. 犬同士の挨拶は必要ですか?

A. すべての犬に必要ではありません。犬は社会的な動物ですが、知らない犬すべてと交流したいとは限りません。散歩では、挨拶よりも安全にすれ違えることを優先してよいです。

Q. お尻のにおいを嗅がせれば仲良くなれますか?

A. お尻のにおいを嗅ぐことは犬の情報収集の一つですが、人が体を押さえて強制するものではありません。犬が怖がる、逃げる、固まる、うなる場合は、嗅がせるより距離を取ることを優先します。

Q. 相手の飼い主が「大丈夫」と言って近づいてきたら?

A. 愛犬が吠えている、固まっている、逃げようとしているなら、断って距離を取って構いません。「練習中なので離れます」「怖がりなので挨拶は控えています」と短く伝え、安全を優先します。

まとめ

犬が散歩中に他の犬へ吠えるとき、近づけて慣らす必要はありません。多くの場合、吠えには警戒、不安、距離を取りたい気持ち、興奮、過去の学習が関係します。

犬が社会的動物だからといって、道端ですれ違う犬すべてと交流する必要はありません。犬同士の挨拶は、双方が落ち着いていて、逃げ道があり、短く安全に終われる条件で検討するものです。

怖がっている犬を押さえて、お尻を嗅がせる挨拶を強制しないでください。散歩で大切なのは、犬が吠えなくても済む距離を作り、安全にすれ違える経験を増やすことです。

犬の吠え全般については、こちらの記事でも整理しています。

参考文献

  1. RSPCA UK. “Barking dogs – what can I do?” 専門団体の飼い主向け助言. 公開年不明. Barking dogs – what can I do?. 参照日: 2026-08-07.
  2. RSPCA UK. “Understanding a dog’s body language.” 専門団体の飼い主向け助言. 公開年不明. Understanding a dog’s body language. 参照日: 2026-08-07.
  3. PDSA. “How can I help my lockdown dog feel less fearful around other dogs?” 獣医療慈善団体の飼い主向け助言. 2021. How can I help my lockdown dog feel less fearful around other dogs?. 参照日: 2026-08-07.
  4. RSPCA Australia Knowledgebase. “How can I socialise my puppy?” 専門団体の飼い主向け助言. 2023. How can I socialise my puppy?. 参照日: 2026-08-07.
  5. American Veterinary Society of Animal Behavior. “AVSAB Position Statement on Humane Dog Training.” 専門団体のポジションステートメント. 2021. Position Statements and Handouts. 参照日: 2026-08-07.
  6. International Association of Animal Behavior Consultants. “Standards of Practice.” 専門団体の実務基準. 2025. Standards of Practice. 参照日: 2026-08-07.
  7. Dogs Trust. “Introducing your puppy to the world around them.” 専門団体の飼い主向け助言. 公開年不明. Introducing your puppy to the world around them. 参照日: 2026-08-07.

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著者


HIROMU ITOGA
Dog trainer/Pet sitter
ペットシッターサービス ma famille 所属

ドッグトレーナー
動物介護士
動物介護施設責任者
愛玩動物飼養管理士