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はじめての犬のしつけ:オビディエンストレーニングの方法とコツ

しつけの基礎理論

学習理論

犬のしつけには学習理論が大切になります。「学習」とは、経験を通じて行動が変わることを指します。犬が新しい行動を学ぶためには、その行動が良い結果をもたらすと理解することが重要です。

古典的条件づけとオペラント条件づけ

古典的条件づけは、ある刺激が別の刺激と結びつくことで、その刺激に対する反応が学習される理論です。一方、オペラント条件づけは、行動の結果によってその行動が強化または弱化される理論です。これらの理論を理解し、適切に利用することで効果的な犬のしつけが可能になります。

プロンプトとフェイディング

プロンプトは、犬が求める行動を引き出すための手助けやヒントを提供することを指します。フェイディングは、プロンプトを徐々に減らしていくことで、犬が自主的に行動を行う能力を育てる方法です。

スモールステップ

犬の学習は、一度に大きなステップを踏むのではなく、小さなステップを積み重ねることで進められます。これを「スモールステップ」と呼びます。一つ一つの小さな成功を積み重ねることで、犬は自信を持ち、学習が進みます。

罰の種類とその弊害

  1. 物理的罰:犬を叩く、チョークチェーン、プロングカラー、電気ショックなど
  2. 声による罰:大声で叱る、怒鳴るなど
  3. 社会的罰*:犬を無視する、孤立させるなど
  4. 環境的罰:犬が嫌がる環境に置く、好きなものを取り上げるなど

*専門家の判断で適切に無視を使用することがあります

これらの罰は、犬の行動を抑制する効果があるかもしれませんが、同時に多くの弊害をもたらします。罰による弊害としては、犬が恐怖やストレスを感じ、学習効率が下がるだけでなく、新たな問題行動を引き起こす可能性があります。また、飼い主との信頼関係を損なう可能性もあります。そのため、犬のしつけに罰を使用することは絶対に避けるべきです。

オビディエンストレーニングの種類と手順

「お座り」のトレーニング

  1. 犬が立っている状態(四足)で始める
  2. 「おすわり」と声をかける
  3. おやつを犬の鼻先から上に持ち上げる
  4. 座ったらすぐに褒めておやつを与える
  5. 少しずつ手の動作を減らしていく
  6. おやつなしで手の動作だけにする

このトレーニングでは、プロンプトとしておやつ(手の動き)を使用し、犬が座る行動を引き出します。また、フェイディングを通じて、おやつなし、手の動きも最小限で「お座り」が出来るようになります。

「伏せ」のトレーニング

  1. 犬が座っている状態から始める
  2. 「伏せ」と声をかける
  3. おやつを犬の鼻先から下に下げる
  4. 伏せたらすぐに褒めておやつを与える
  5. 少しずつ手の動作を減らしていく
  6. おやつなしで手の動作だけにする

このトレーニングでも、プロンプトとフェイディングを使用します。おやつを使って犬の行動を引き出し、徐々におやつなしでも「伏せ」が出来るようにします。

「待て」のトレーニング

  1. 犬が座っている状態から始める
  2. 手のひらを犬の目の前に出し、「待て」と声をかける
  3. 犬が動かなければすぐに褒めておやつを与える
    ※動いた場合は、再度座らせてから指示を出す
  4. 徐々に待つ時間を延ばす

「待て」のトレーニングでは、手のひらを出すジェスチャーがプロンプトとなります。フェイディングを通じて、声だけで「待て」の指示を理解するようにします。

「おいで」のトレーニング

  1. 犬と少し離れた状態で始める
  2. 「おいで」と声をかけておやつを見せる
  3. 犬が来たらすぐに褒めておやつを与える
  4. 徐々に距離を伸ばしていく
  5. 少しずつ手の動作を減らしていく
  6. おやつなしで手の動作だけにする

このトレーニングでは、手の動作やおやつがプロンプトとなります。フェイディングを通じて、おやつなしでも「おいで」の指示に従うようにします。

「ヒール」のトレーニング

  1. 犬を左側につけた状態から始める
  2. 「ヒール」と声をかける
  3. 犬の鼻先におやつを提示し、一歩進むく
  4. 犬が左足の横について来たらすぐに褒めておやつを与える
  5. 2歩、3歩と歩く距離を徐々に伸ばす
  6. おやつなしで手についてくるようにする
  7. 手の誘導も無くしていく

「ヒール」のトレーニングでは、手の動作とおやつがプロンプトとなります。フェイディングを通じて、声がけだけで「ヒール」の指示に従うようにします。

注意点とトラブルシューティング

犬のしつけには、以下のような注意点があります。

  1. 犬の気持ちを理解する:犬が何を感じ、どう思っているのかを理解することが大切です。
  2. 一貫性を持つ:指示や褒め言葉、罰は一貫性を持って行うことが重要です。
  3. 無理な指示は避ける:犬に無理な指示を出すと、犬が混乱し、学習が進まなくなる可能性があります。
  4. 犬のペースを尊重する:犬によって学習のペースは異なります。焦らず、犬のペースを尊重してください。

トレーニング中に問題が発生した場合、以下のような対策を試してみてください。

  1. トレーニングの環境を見直す:環境が犬にとってストレスフルだったり、気を散らす要素がある場合、トレーニングの効果は低下します。
  2. トレーニングの時間を調整する:犬が疲れていたり、食後すぐなど、体調が最適でない時間にトレーニングを行うと、効果が出にくいです。
  3. 報酬を見直す:犬が十分に魅力を感じない報酬では、学習の動機付けになりません。犬が喜ぶ報酬を見つけることが重要です。
  4. プロの助けを借りる:自分で解決できない問題が発生した場合、プロのドッグトレーナーや行動専門家に相談することを検討してみてください。

さいごに

はじめての犬のしつけは、犬との信頼関係を築くための重要なステップです。学習理論を理解し、プロンプトやフェイディングを利用したトレーニングを行うことで、犬は新しい行動を学び、理解することができます。罰を使用することなく、愛情と理解をもって接することで、犬との素晴らしい関係を築くことができるのです。


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著者


HIROMU ITOGA
Dog trainer/Pet sitter
日本ペットシッターサービス仙台店所属

ドッグトレーナー
動物介護士
動物介護施設責任者
愛玩動物飼養管理士